Story : Beer Trip

〜ラベルから読む物語〜 Vol.3「PRIMUS/プリムス」

あなたにとってベルギービールの楽しみ方とは?「香りと味わいを感じて楽しむ」「様々な種類のビールを楽しむ」「相性のいいお料理と組み合わせて楽しむ」など、人それぞれの楽しみ方がありますよね。なかには、”ジャケ買い”のように「ビールラベルで選んで楽しむ」人も多いでしょう。そこで「ラベルから読む物語」では、ベルギービールのラベルに描かれている絵にまつわる物語を紐解いていきます。

〜ラベルから読む物語〜Vol.3「PRIMUS / プリムス」

そもそも「プリムス」のラベルをじっくり見たことはあるだろうか?見落としがちだが、そこには馬に乗る騎士のデザインがさりげなくプリントされている。そう、まさにこの勇ましい騎士こそが今回の物語の主人公である。

第3話は「PRIMUS(プリムス)」にまつわる物語。日本で缶ビールとしても販売されているピルスナーの王道、「プリムス」の世界にいざなおう。

「プリムス」のラベルの騎士は、この人物。彼の名を、ブラバント公ジャン・プリムス(ジャン1世。プリムス=1世という意味)という。

ラベルに隠されたストーリーとは

ブラバント公ジャン1世は、13世紀で最も権力のあった王様。父の死後、気の弱い兄ヘンリー4世は1267年、自分の代わりにジャンを支持して王位を退位しました。その後、ジャン1世のもとでブラバントは最盛期を迎えるのです。

彼はこの時代に通貨制度を改革し、貿易に新たな息吹を吹き込みます。そして1288年にはヴォーリンゲンの戦いに勝利し、ルクセンブルク伯ハインリヒ6世を討ち取り、リンブルク公国を支配下に収めました。これによって交易路の安全を確保し、ブラバントは神聖ローマ帝国の中で繁栄する国家へと成長します。一方でジャン1世は詩人としても名を馳せ、ハイデルベルクの偉大な歌写本(マネッセ写本)の中の9つの民謡を作曲したのでした。

彼の功績は、まるで夢物語のように壮大で立派ではありませんか?通貨制度の改革、貿易路の確保、貿易の活性化、民謡作曲を成し遂げ……そしてなんと、ビールの流通・発展にも貢献しているのです!

そう、彼はこの時代、最も権力をもつ王様でありながら、大のビール好き!パーティー好きでビール愛好家としても有名だったジャン1世は、醸造家に特別な特権を与えたのです。ハーヒト醸造所ではジャン・プリムスがビールの特権を与えたことに対する感謝の気持ちを示し、ピルスナービールにその名をつけました。

ハーヒト醸造所

現在ベルギーにおいて約100ある醸造所の中で、ハーヒト醸造所は4番目の規模です。フレミッシュ・ブラバント州にある、ハーヒトという町に隣接する Boortmeerbeek(ボールツメールベーク)に位置し、由緒ある家族経営による醸造所です。

はじまりは、牛乳屋さんだった!🐮🥛

現在のハーヒト醸造所がある場所、実は牛乳屋さんだったのです!1897年、後の革命児となるEugène De Ro(ウジェーヌ・デ・ロー)は、牛乳屋さんである”Brouwerij en Melkerij van Haecht” に入社しました。ウジェーヌは牛乳が大好きで入社したのか……は、皆さんのご想像にお任せします。入社から1年が経った1898年に、ウジェーヌが本当に大好きな飲料「ビール」の醸造を始めて、6月14日に初めての上面発酵ビールを醸造しました。ハーヒト醸造所の歴史はここから始まったのです!

その4年後には下面発酵ビールも醸造し、一躍大人気商品となっていきました。彼のビールは1913年にベルギーで「最も優れた商品」となるほど大ヒットしたのです。1929年に、牛乳屋さんは完全にビール醸造所へと業務形態を変えました。

1950年、ウジェーヌ・デ・ローが始めた最初のボトリング工場を設立し、翌年、彼の義理の息子であるAlfred van der Kelen(アルフレッド・ファン・デル・ケレン)が醸造所のCEOに就任しました。その後、小規模な買収が何度も行われ、ハーヒト醸造所のビールは全国に流通するようになりました。アルフレッドが1968年に亡くなった後、息子のFrédéric(フレデリック)が後を継ぎ、現在はフレデリックの息子Boudewijn van der Kelen(ボードワイン・ファン・デル・ケレン)が2020年11月2日に新たなCEOとして就任したばかりです。

2020年11月2日、新たなCEOが就任

120年以上前から家族経営をしており、第4世代となるボードワインはこのような意気込みを発表しています。

I’m very honored to be able to take on this new role. I will continue to run Haacht Brewery as a Belgian business that respects the traditions of the past while adapting to the challenges of the future.

ーBoudewijn van der Kelen

「この度、新たな役割を引き受けることができ、大変光栄に思っています。私は、過去の伝統を尊重しながら、未来への挑戦に適応していくベルギー企業として、ハーヒト醸造所を経営していきたいと思います」。

昔からのモットーでもある伝統を守りつつ、変わらぬ型破りで献身的な姿勢で、新たな挑戦に立ち向かうハーヒト醸造所の今後の展望が楽しみですね。

クイズ① 1898年の初めてのビール醸造から、「PRIMUS(プリムス)」は何年後に醸造されたでしょうか?

A — 1898年の初めてのビールがプリムス
B — 1898年から5年後
C —1898年から28年後
D —1898年から76年後

実はピルスナービールの「PRIMUS(プリムス)」が初めて醸造されたのは、(D)1898年から76年後の1974年。翌年にメインラガービールとして販売がスタートしました。

 

クイズ② ハーヒト醸造所のビール、年間生産量は何リットル?

A — 12万キロリットル
B — 10万キロリットル
C — 6万キロリットル
D — 3万キロリットル

ハーヒト醸造所はカナダの地ビール会社を2016年に買収したことにより、今ではカナダや北米の消費者でも、ハーヒト醸造所の本格的なクラフトマンシップを楽しむことができるようになりました。こうして、ヨーロッパのみならず、世界中にプリムスの名を広めることに成功したのです。ハーヒト醸造所の年間生産量はなんと(A)約12万KLキロリットルにもおよぶのだとか!

さあ、あなたはプリムスだけでなく、ハーヒト醸造所にも詳しくなったはず!どんな醸造所なのか覗いてみたくなりませんか?下記のビデオを見れば、たとえ言葉がわからなくても、その規模感伝統歴史ビールへの情熱が伝わるはず!

ラベルの物語を知ってから飲むプリムスは一段と美味しいに決まっています!それではプリムスのビールを紹介しましょう。

プリムス

ビールタイプ:ピルスナー
醸造所:ハーヒト醸造所
アルコール度数:5.2%

まるで輝かしい功績を残したジャン1世のオーラのように、明るい淡黄金色のラガービール。若干の苦味とほのかな甘みに、とてもバランスの良い洗練された味わいが特徴的。比較的、さまざまな料理とペアリングがしやすいビールです。ホップが香るクリアな味わいと爽快な喉越しは、ベルギーをはじめ、オランダ、フランスなどヨーロッパ各国で親しまれています。日本でも購入可能です。

料理とのペアリング
Food x PRIMUS = great match!

今回はハーヒト醸造所から「プリムス」を紹介しました。ピルスナーなので、さまざまな料理とペアリングがしやすいです。その中でも一押しのペアリングを紹介します。

生ハムサラダ

生ハムの塩気とさっぱりしたサラダの口当たりは、プリムスとの相性抜群!食事の味を邪魔しないビールなので、他のさまざまなサラダにも合います。

フィッシュ&チップス

魚とじゃがいもを使った料理。レモン汁またはビネガーをたっぷりかけて食べるのがコツ。はい、これにプリムスが合わないはずがありません!(東京駅直結:レストラン「東京ビアパラダイスby Primus」で食べられます)

パプリカのグラタン

トースターで簡単にできる1品です。パプリカの中にチーズやツナなどお好みの具材を入れて、スパイスを効かせて温めるだけ。絶妙なマリアージュをご堪能あれ!

ホットドック

スポーツ観戦のときや友達が家に来たときに、気軽に飲めるのがプリムス!ホットドックのみならず、ピザや唐揚げなどパーティー料理と合わせると最高!

ラベルから読む物語「プリムス」はいかがでしたか?さりげなくプリントされた騎士のデザインには、壮大な物語が隠されていましたね!そして、ペアリングのできる範囲が広いので色々試してみる価値あり!次回の物語もお楽しみに!

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