Story : Beer Trip

アントワープ – De Koninckの街を歩く

ビールと一緒に旅をしよう。「BEER TRIP」では、ビールを旅の相棒にベルギーの地方を散歩する。第1回の目的地は、ANTWERP(アントワープ)。ベルギーで最もファッショナブルでユニークなこの街では、どんなビールと出会えるだろう。

01. 

THE CITY OF FASHION

ファッションリーダーと出会える街

ストリートを行き交う、ファッショナブルな若者たち。ここアントワープは、ベルギーで最もファッショナブルな街と言われている。

©POLIENNE.COM

ファッション業界においてアントワープといえば、“王立芸術アカデミー”。そこは有名デザイナーを数多く輩出するファッションデザイナーの登竜門だ。アントワープの名を知らしめたのも、卒業生の6人組“Antwerp Six※”の貢献が大きかった。当時のファッション業界に革新をもたらしたメンバーの中には、日本でも人気のドリス・ヴァン・ノッテン、マルタン・マンジェラといったビッグネームが並ぶ。

この街でファッションブロガーとして活躍するポーリン曰く、アントワープのファッションは「エフォートレスで都会的。組み合わせやディテールに個性を出しつつ、動きやすさも忘れない」のがスタイルだとか。ちなみに今、お洒落なアントウェルペンは、アントワープ王立芸術アカデミー出身デザイナーが手がける大人気仏ブランド「Vêtements」に夢中で、街を訪れる観光客の間でも買い物リストのトップを占めているそう。一方彼女は、「でもアントワープ・ショッピングの本当の狙いどころは、高級ブランドじゃないのよ」と、なにやら意味ありげ。これは一度、買い物しに行かなくては。

※Antwerp Six … 1980年初頭、アントワープの王立芸術アカデミーを卒業した6人組。1986年のロンドン・ファッション・ウィークに登場して以来、その斬新なクリエーションで世界を魅了した。

©POLIENNE.COM

Paulien Riemis (ポーリン リミス)
アントワープ在住ファッションブロガー。彼女のお洒落なスタイルが満載のブログはこちらインスタ更新中!

 

02.
A WORLD DIAMOND CENTRE

通称ダイヤモンド・ディストリクト

アントワープは、ダイヤモンドの取引量世界一を誇るダイヤモンド・シティ。世界のダイヤモンド原石のおよそ8割がこの街に集められる。

©Guy Kleinblatt

古くから世界有数の貿易港として栄えたアントワープは、世界でただ一カ所の原石専門の取引所としても知られている。アントワープ中央駅のすぐ側は“ダイヤモンドストリート”と呼ばれ、ダイヤモンド関連会社が1800社も立ち並ぶ。この一帯だけで、年間の取引額がおよそ270億ユーロ(3兆円以上)にも上るという。

1800

アントワープ市内のダイヤモンド関連会社数

80 %

世界におけるアントワープのダイヤモンドシェア

03. 

DON’T ASK ABOUT “THE DOG OF FLANDERS”

ベルギー人は悲劇が苦手

日本で大人気、ベルギーでは不人気のあの名作の舞台がここ。日本人ファンの熱意に押され、 2016年ついに銅像が完成。

実は、日本中が泣いたアニメ「フランダースの犬」の舞台は、アントワープ。しかしこの名作を知っているベルギー人は、ほとんどいない。え、なんで?というのも、もともとはイギリス人作家による英語の小説であったため、ベルギー人に知られることなく日本に渡ってきたのだ。しかも日本では全52話のストーリーとして放送され大ヒットしたが、もともとの原作は13ページで完結。ハッピーエンディングでないため、ベルギーでは広まらなかったのだ。

それでもアントワープに行くと、1352年に創建されたゴシック様式の大聖堂、ノートルダム大聖堂で、ネロが憧れていたルーベンスの絵画「キリストの降架」を見ることができる。ルーベンスはアントワープで活躍した画家。

04. 

THE LEGEND OF “THROWING THE HAND”

“巨人の手”伝説

アントワープには、「それを知らずして、アントワープを語るなかれ!」と言われるほど有名な伝説がある。

©Kris Jacobs

昔むかし、アンティゴーンという名の巨人が、スヘルデ川を行き来する船から高額な通行料を要求し、拒む者には罰として片手を切って川へ放り捨てていた。これに怒った勇敢なローマ軍の若き将校シルヴィウス・ブラボーは、巨人アンティゴーンの息の根を止め、切り落とした手首を投げ捨て、成敗したのだった。

巨人の“手 hand (ant)”を“投げた werpen”ことから、アントワープ(アントウェルペンantwerpen)の名が付けられたという通説もあるほど、有名な伝説だが、正式な名前の由来は、スヘルデ川の河川に土砂が推積し、その河畔に誕生した“推積土による土手”という意味の古いオランダ語に由来しているのだとか。

市庁舎とギルドハウスが並ぶマルクト広場には、噴水の上に英雄シルヴィウス・ブラボーの像がそびえ立ち、彼の手には巨人アンティゴーンの切り落とした手を見ることができる。ブラボーの下には、手を切り取られたアンティゴーンが横たわっているので、観光の際は注目してみよう!

©Antwerpen Toerisme en Congres

アントワープのイメージができてきたところでお待ちかね、アントワープを代表するクラフトビールを紹介しよう。

その正体はもちろん、「DE KONINCK」だ。

「DE KONINCK」とは

アントワープを象徴するシンボルマークの「手」。これをモチーフにしたアントワープを代表するクラフトビール「DE KONINCK(デ・コーニンク)」は、地元っ子に愛される人気ビールのひとつ。醸造所は1833年に設立され、地元には100軒以上の直営カフェをもつ。

飲む前からワクワクさせられるのがその香りだ。柑橘系とクローブのような香りで思わずルンルン気分に!麦芽とホップ(サーズ)のみを原料としたこだわりのビールで、クリーミーな泡立ちが特徴的。ろ過をして時間をかけて醸造している。(アルコール度数5%、上面発酵)

愛称“BOLLEKE”の意味とは?

デ・コーニンクはオランダ語で“王様”の意味。地元では、“BOLLEKE(ボレケ)”の愛称で親しまれている。直訳は“ビールの入ったグラス”の意味だが、地元ではデ・コーニンク専用の330mlグラスのことを指し、“王様”の意味。これに対し250mlグラスは“PRINSKE(プリンスケ=“王子”の意)”と呼ばれ、地元民はグラスをサイズにより“王様”、“王子”と呼び分けているんだって。

2015年、デ・コーニンク醸造所がリニューアル。ミュージアムのようなモダンな施設は、アントワープのあらたな観光名所だ。

おすすめ!醸造所ツアー

醸造所は誰でも見学可能。ツアーでは、醸造所の歴史から醸造方法の紹介コーナーから、バーチャル体験まで盛りだくさん。料金は2種類あるが、ぜひテイスティング込みの10ユーロに参加してほしい。ビールが苦手なら、テイスティングなしの7ユーロへ。

 

ビールと一緒に、チョコレートはいかが?

醸造所内には、デ・コーニンクと相性抜群の食品、肉・チーズ・チョコレートの専門店が併設されており、ビールとのフードペアリングが楽しめる。ビール初心者でも気軽に参加できるので、時間があればぜひ参加してみよう。

もっとデ・コーニンクを味わいたい!醸造所で楽しむ4つのフードペアリングはご覧の通り。

5 BEER & MEAT PAIRINGS
ビール5種x肉のペアリング

5 BEER & CHEESE PAIRINGS
ビール5種xチーズのペアリング

5 BEER & CHOCOLATE PAIRINGS
ビール5種xチョコレートのペアリング

MEET THE CRAFTS DELUXE
ビール6種xチーズ2種、肉2種、チョコレート2種

ユニークな“手”土産を持ち帰ろう

デ・コーニンク醸造所内には、ほかにもレストランやバー、サイクルショップまで併設されていて、1日中楽しめる。中でも人気なのが土産ショップだ。“手”をモチーフにしたキーチェーン、洋服、文房具、自転車グッズ、カバン、帽子など、ここでしか“手”に入らないユニークでファッショナブルなグッズが購入できる。醸造所ツアーをする時間がなくても、レストランやバー、土産ショップは誰でも気軽に入れるので、友達や家族、同僚への土産に困ったら、ここへ!

アクセス

Mechelsesteenweg 291, 2018 Antwerpen, BE

ちなみに、アントワープではほかにも幻のビール「SEEF BEER(セーフビール)」が有名だ。
でも、この話はまた別の機会に。

次回「BEER TRIP」もお楽しみに!

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