Story : Beer Trip

〜ラベルから読む物語〜 Vol.4「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」

あなたにとってベルギービールの楽しみ方とは?香りと味わいを感じて楽しむ、様々な種類のビールを楽しむ、相性のいいお料理と組み合わせて楽しむなど、人それぞれの楽しみ方がありますよね。中には、”ジャケ買い”のようにビールラベルで選んで楽しむ人も多いでしょう。そこで「ラベルから読む物語」では、ベルギービールのラベルに描かれている絵にまつわる物語を紐解いていきます。

〜ラベルから読む物語〜Vol.4「DUCHESSE DE BOURGOGNE / ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」

早速みなさんに問います。「ラベルの女性って誰だか知ってる?」と。歴史を感じさせる彼女の雰囲気が、悲しそうに見えるのか、はたまた楽しそうに見えるのか、その印象は人それぞれ。気になる彼女の人生に迫ります。第4話は「DUCHESSE DE BOURGOGNE / ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」にまつわる物語。

この女性はだれ?

マリー・ド・ブルゴーニュ(以下マリー)。ヴァロワ・ブルゴーニュ家の4代目君主・シャルルの娘。父が戦死したことで、1477年に唯一の娘であるマリーは20歳でブルゴーニュ公国を継承します。しかし、フランスのルイ11世の侵攻や内乱が相まって窮地に陥り、生前の父が決めた婚約者であるハプスブルク家のマクシミリアンと結婚。政略結婚ながらも幸せな結婚生活を送っていたある日、落馬が原因で25歳にして生涯を終えます。マリーの死後、ブルゴーニュはハプスブルク家の支配下に入ります。夫マクシミリアンは神聖ローマ帝国の皇帝となり、マリーの孫に当たるカール5世によってハプスブルク家は大帝国を築きあげることになるのです。

ラベルに隠されたストーリーとは

マリーは絶世の美女としても知られていました。領民からは「美しき姫君」「我らのお姫さま」と慕われ、絶大の人気がありました。そんなマリーとマクシミリアン1世は当初、政略結婚であったにも関わらず、一緒に鷹狩りに出かけたり、乗馬やスケートも好んだり、今で言うアウトドア派な結婚生活を謳歌していたのです。この時代の女性としてはかなり珍しく運動好き!

そんなアクティブで人気者だったマリーは、第4子を懐妊中の1482年3月27日にワイネンデール城の近くで落馬し、25歳の若さで亡くなりました。マクシミリアンと乗馬をしながら趣味の鷹狩りをしていた時、馬がつまずいて彼女を投げ飛ばし、彼女の上に着地して背中を骨折。数日後、自身の死を悟った彼女は詳細な遺書を作成し、亡くなりました。

当時の人々にとってはかなりのセンセーショナルでショッキングなニュースだったに違いありません。マリーはブルージュの聖母教会に埋葬されており、マクシミリアンの心臓もマリーの墓に共に埋葬されています。

この「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」は、フランス語で「ブルゴーニュ女公」(=マリー)の意味で、彼女の肖像がラベルに印刷されています。そして手に乗っている鳥は、彼女が亡くなる原因ともなった鷹なのです。(でも鳩っぽいな…)

マリア・カロリフィア(Maria Karoli filia)と題された絵画

ラベルの絵画は現在、ベルギーの首都ブリュッセルから車でおよそ30分ほどの場所にある静かで自然豊かなガースベーク城(Kasteel van Gaasbeek)のひと部屋「ゴシックの間」にひっそりと飾られています。この絵画の作者は”マグダレン伝説のマスター”と呼ばれる特定されていない人物で、推定1483年から1527年に活躍していたとされています。

ガースベーク城は13世紀に建築、19世紀に再建されました。東京ディズニーランドとほぼ同じ面積の敷地内にはレストラン、大庭園、博物館や売店などが併設されており、観光客にも人気のスポットです。

ガースベーク城は現在、大規模な修復作業(2023年まで)が行われています。嬉しいことに城内を散策できるよう、現在は公式ウェブサイトにて、なんと「ヴァーチャルツアー」が絶賛公開中!音楽をかけて、美味しいドゥシャス・デ・ブルゴーニュを飲みながら、素敵な旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか?

ブルージュ聖母教会に眠るマリー

ベルギーのブルージュ聖母教会には、ブルゴーニュ公シャルル・ザ・ボールド(マリーの父)とその娘マリーの壮麗な墓があります。

高さ115.5メートルのレンガ造りの尖塔を持つ聖母教会は、世界で2番目に高いレンガ造りの塔であり、街のシンボルです。中世のブルージュにおける石工技術の極みでもあります。この教会は13~16世紀にかけてロマネスク様式で建設され、その後修復を重ねたため、さまざまな時代の建築様式が混在しています。教会内には、あのミケランジェロ作の彫刻「ブルッヘの聖母子像」があることが特に有名。

16世紀半ばに完成したこの墓は、ルネサンス様式。2つの墓の前には、ブリュッセル出身の画家ベルナールト・ファン・オルレイ(かつてベルギーで発行されていた500フラン紙幣に肖像が使用されていた人物)の3枚組の作品があります。

ヴェルハーゲ醸造所
BROUWERIJ VERHAEGHE

緑の生け垣と質素な住宅の間に位置するヴェルハーゲ醸造所(Brouwerij Verhaeghe)は、西フランダース地方にあります。1885年にポール・ヴェルハーゲが醸造所を設立して以来、ヴェルハーゲ一族によって同じ場所で醸造を続けています。この西フランダース地方の典型的な産物である伝統ある赤褐色のレッド/ブラウン・ビールは混合発酵のビールで、若い上面発酵のビールと、自然発酵させた後に直立したオーク桶で熟成させたビールをブレンドしています。

ベルギーの醸造所を襲った波乱なストーリー
CHALLENGES FOR BELGIAN BREWERIES

第一次世界大戦の勃発が、ベルギーに存在していた醸造所の発展に突然ストップをかけることになりました。ヴェルハーゲ醸造所は、ポールがドイツ軍へのビール醸造を断った後、ドイツ占領軍によって完全に取り壊されてしまったのです。戦争の弾薬製造材料として銅製品を再利用する目的から、他の多くの醸造所の醸造設備もまたドイツ軍によって持ち去られてしまいます。1919年、ヴェルハーゲ醸造所はゼロからのスタート。何もできない時期が5、6年続き、ブリュッセルの顧客をすべて失い、地元の顧客と一緒に再構築しなければいけませんでした。

ビールの流行りが移り変わる激動の時代
NEW STYLE OR CLASSIC

醸造所が再興し始めた頃、ベルギーでは新しいスタイルのビール「ピルスナー」が登場し、ヴェルハーゲが長年製造してきた伝統あるレッド/ブラウンのビールは流行らなくなりました。そして新しい設備に投資し、独自の下面発酵ビールを製造しました。このビールは現在もVerhaeghe Pilsとして醸造されていますが、生産量の10%にも満たないビールです。

そして第二次世界大戦が勃発すると、ベルギーに残っていたビールメーカーにも新たな試練が訪れました。トレンドの変化です。現在の醸造所第4世代目のカール・ヴェルハーゲ(Karl Verhaeghe)は「19世紀初頭、ベルギーには3,000の醸造所がありました。今、残っているのは120軒ほど。伝統を守るために市場の新しいトレンドを追うのはもちろんですが、それよりも重要なのは、120年前と同じ方法でビールを醸造していることです」と語ります。

DUCHESSE. DUCHESSE. DUCHESSE. 

ドゥシャス・デ・ブルゴーニュは、現在も製造しているスタンダードなビール「ヴィヒテナール」をより手の込んだものにしたもの。少し強めの味付けで、アルコール度数6.2%(ヴィヒテナールは5.1%)。アルコール度数が少し高いことで、ビールの味も少しレベルアップし、より洗練された、より良いバランスになっています。

彼女(マリー)はとてもパワフルで、この地域にとってとても重要な人物でした。この地の市民に多くの権利を与え、醸造をはじめとする当時の商業活動にとても協力的でした。

 

マリー・デ・ブルゴーニュは、西フランダースで非常に重要かつ愛されていた人物。ブリュッセルで生まれ、後にマクシミリアン1世と結婚したマリーは、リッチでよくできたビールにふさわしい名前だと考えました。彼女は、わずか5年という大変短い統治期間にも関わらず、ビール醸造を含む数多くの商業活動を支援しました。ドゥシャス・デ・ブルゴーニュというビールは、彼女の功績を称えて名付けられたのでした。

ヴェルハーゲ醸造所は、西フランダース地方の美しい自然の中にたたずむ歴史ある醸造所です。どんな醸造所なのか覗いてみたくなりませんか?下記のビデオを見て、醸造所見学をしている気分をぜひ味わってください。

ビール紹介

ラベルの物語を知ってから飲むドゥシャス・デ・ブルゴーニュは一段と美味しいに決まっている!それではビールを紹介しよう。

ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ

ビールタイプ:レッド・ビール
醸造所:ヴェルハーゲ醸造所
アルコール度数:6.2%

ベルギーの西フランダース地方に古くから伝わるレッド・ビールの傑作。オーク樽で18ヶ月間熟成したビールと、8ヶ月間熟成した若いビールをブレンドしたもので、色は赤みがかったダークブラウン。酸味を感じさせる香り、ブラックチェリーやパッションフルーツのような複雑な香りがあります。香りから想像されるほどのすっぱさはなく、酸味と甘味のバランスがとてもよいビール。ボリューム豊かで、複雑な味わいを持った1本です。”赤ワインのようだ”と称されている。

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料理とのペアリング
Food x DUCHESSE DE BOURGOGNE = great match!

今回はヴェルハーゲ醸造所からドゥシャス・デ・ブルゴーニュを紹介しました。レッド・ビールは、上品な甘さの中に、ほどよい酸味が含まれています。その独特の味わいにぴったりの料理をご紹介します。

トマトの和風出汁煮

和風料理に合わせるなら、ちょっと試していただきたい一品。トマトの酸味がキーワードとなります。暑い季節にさっぱりとしたペアリングをぜひお試しあれ!

ラザニア

トマトの酸味とクリーミーなソースが、食欲をそそりますね!ラザニアとペアリングしても、お互いの味を邪魔しないので、美味しくいただけますよ。

中華料理(エビチリ)

甘酸っぱさでペアリングさせたら最強の一品。トマトケチャップの甘酸っぱさとビールの深みある甘酸っぱさをぶつけたペアリング、ハマる人は箸が止まらないかも。

ジェラート/アイスクリーム

なんとジェラート/アイスクリームとも相性抜群!フルーツビールではないのに、ほのかな甘みと、ジェラート/アイスクリームの甘みがくせになる美味しさ。

ラベルから読む物語「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」はいかがでしたか?やっとラベルに描かれているマリーについて知ることができましたね!市民が彼女を愛していたように、世界中のビール通にもビールが愛されています。さて、次回の物語もお楽しみに!

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