Belgian Beer

世界遺産になったベルギービール「文化」とは?

2016年、晴れて「ベルギービール文化」がユネスコの世界無形文化遺産に登録された。中には日本でも、その瞬間誇らしげに祝杯をあげた人がいるかもしれない。しかしなぜ、ベルギービールではなく“ベルギービール文化”が世界文化遺産になったのだろう?答えを知るには「ベルギービール文化とは何か」を探るのが近道だ。

01. 


4 FERMENTATION METHODS
世界で唯一4つの発酵方法

下面発酵(ラガーやピルスナー)・上面発酵(昔ながらの酵母を使用)・自然発酵(自然の野生酵母を使用したユニークな方法)・複合発酵(非常に特殊な発酵方法)の4つの発酵方法をもつのは、世界でもベルギーだけ。そのため発酵方法や使用酵母はもちろん、醸造プロセス、色合い、品質管理、知識や伝統、これらすべて無限の多様性をもっていることが評価された。

02. 


REGIONAL VARIETIES
地域ごとの特色と豊富な種類

ベルギーでは、地域に根付いた小規模な醸造所が数多く存在している。そこで造られるビールのほとんどは地元の農産物を使用した、ローカルなクラフトビールだ。特にブリュッセル郊外でのみ造られるランビック・ビールや、修道院だけで造られるトラピスト・ビールなどの伝統的なベルギービールは、ベルギービールの地域性と特色を表す文化のひとつとして評価された。

©Pieter D'Hoop

03. 

A LIFESTYLE
ライフスタイル

ベルギー人にとって、ビールはライフスタイルの一部。たとえばビールを使った料理は、昔からの伝統。隠し味程度?いやいや!しっかり味付けに使用するなど、ベルギーにおいてビールは料理を素晴らしい一品へと変貌させる大切な調味料のひとつだ。また20世紀初頭にはベルギーには3000軒以上の醸造所があり、20万軒を超えるビアカフェが立ち並んでいたという。最近はライフスタイルの多様化からベルギーでも若者のビール離れなどが言われるようになったが、依然ベルギー人にとってビールは一番のベストフレンドだ。

04. 

THE BREWER’S ORIGINALITY
醸造所のこだわり

ベルギーでは原材料の使用制限がないため、さまざまなハーブやスパイス、その他の原材料を入れることで、より一層オリジナリティー溢れるビールが造られている。醸造所のこだわりはビールだけでなくラベル、コースター、グラスなどあらゆる方面に及び、ベルギービール通にはたまらないコレクターズアイテムとして大人気。お土産として買う旅行客も多い。

©Pieter D'Hoop
©Bart Van Der Perren

05. 

SUPPORT
社会全体の姿勢・サポートシステム

ベルギーの醸造所の多くは地元の農産物を使用し、地域の祝祭を含む経済・社会生活全体に大きく影響している。イベントには必ずベルギービール。ベルギービールがなければ、イベントではないという概念が根付いているようだ。

そして、何よりも国民のアイデンティティとも呼べる伝統あるビール造りを、世代を越えて守り抜いてきた歴史、料理とのペアリングなどビールを生活の一部として楽しむ人々のライフスタイル、製造過程の水使用量削減をはじめ、高品質なビール造りと持続可能な生産を目指す醸造努力、社会全体で次世代醸造家の育成に取り組む姿勢など、ベルギービールにまつわる文化そのものが評価された。

ベルギー人にとって、ベルギービールはただのビールではない。
それはベルギー人の歴史の、日常の、社会の一部として息づき、守られている“文化”そのもの。
ユネスコがベルギービールではなく、“ベルギービール文化”を世界遺産に選んだ理由は、
そんなベルギー社会全体のビール愛を評価したからに他ならないのだ。

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