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【SIP Voice】「日本のクラフトブルワリーとして、初めてこの舞台に立つ」京都醸造、10年越しの想い
September 2026
ベルギービールウィークエンド(BBW)に、日本のブルワリーが単独で参加するのは、今回が初めてです。
会場は京都。コンセプトは「Flavors from Kyoto」。京菓子や京漬物といった、京都の食文化を担う顔ぶれと肩を並べる形で出店するのが、京都醸造。ベルギービールが主役のこのビールフェスに、なぜ日本の、しかも京都の醸造所が出店するのか。答えは、彼らが10年以上前から積み重ねてきた、ある一つのこだわりにあります。
2014年、南区から始まった醸造
A brewery born in Kyoto
京都醸造は2014年、国籍の異なる3人の醸造家によって京都市南区に立ち上げられた。「国内のクラフトビールシーンを盛り上げたい」という想いから始まったこの醸造所は、翌2015年春から本格的にビール造りをスタート。以来、ベルギー由来の酵母とモダンなホップを掛け合わせるという、他にはない方向性を貫いてきた。
そして2024年、大きな転機が訪れる。アメリカの名門ブルワリー「Stone Brewing」「Ballast Point」で10年以上の経験を積んだジェームズ・フォックス氏が、新ヘッドブルワーとして加入したのだ。
“ベルギーの酵母とモダンホップを掛け合わせた定番製品をはじめ、京都醸造らしい味わいを日々追求しながら、私たちにしかできないビール造りを極めようとしています。”
―― 京都醸造
既存製品のアップデートに加え、設備投資や新しい製法への挑戦を積極的に進めている。
ベルギービールとの出会い、そして「セゾン」という運命
A Belgian beer encounter that led to saison
共同創業者の一人であるベン氏は、ウェールズ出身。地元パブで親しまれてきたクラフトエールに囲まれて育った彼にとって、初めて出会ったベルギービールは衝撃だったという。
“アルコールの強さだけでなく、味わいの豊かさや、一杯をゆっくり味わうという文化そのものが、それまで知っていたビールとはまるで別の世界に感じられた。”
―― 京都醸造 共同創業者・ベン
きっかけの一つは、初期に飲んだベルギービール「Leffe(レフ)」だった。当時イギリスのパブを席巻していたのは大手ラガーやギネス、そしてアルコール度数3.5〜4.5%ほどの地元エール。そこへ、6.5%を超えるレフが現れる。度数の差だけで、すでに未知の世界だった。
ちょうど同じ頃、アメリカを中心に新しいホップを取り入れたクラフトビールのムーブメントが盛り上がりを見せていた。その波の中で、ベルギー国内でさえ影が薄くなりかけていたスタイル──セゾンに再び光が当たる。
“ホップだけでなく、麦芽や水、酵母まで、すべての原料が重なり合うことで生まれる複雑で奥行きのある味わいに、私たちはすっかり圧倒されました。それでいて飲み口はドライで、「もう一杯!」と自然に手が伸びる。”
―― 京都醸造
このバランスにすっかり心を奪われたという。まさに、京都醸造という会社の方向性を決定づけた出会いだった。
酵母こそが、ブルワリーの個性になる
Yeast is the soul of the brewery
ベルギービールを掘り下げていくなかで彼らが驚かされたのは、酵母がビールの味だけでなく、醸造所そのものの個性を形づくっているという事実だった。同じ原料を使っていても、代々受け継がれてきた酵母が違えば、香りも味わいも、ビールの印象そのものが変わる。
京都醸造が自社のビール造りの軸となる酵母として選んだのが、アルデンヌ系の酵母。この酵母を軸に、フラッグシップの「一意専心」や「週休6日」をはじめとしたベルギー酵母×モダンホップのIPAシリーズも生まれている。
“アルデンヌを選んだ大きな理由は、すっきりとドライな後味です。そこに心地よいフルーティーなエステル香と、前に出すぎない、ほどよくバランスの取れたスパイシーな香りが加わる。個性はしっかりとありながら、決して重たくなりすぎない。”
―― 京都醸造
醸造の現場では、この酵母の「強さ」を日々実感しているという。タンクから回収して次の仕込みに使う際にも、いつも元気な酵母を多く回収できる。
“最近はアメリカの酵母とベルギー酵母を掛け合わせたビールも造っています。ベルギー酵母由来のフルーティかつスパイシーな香りがアメリカの酵母やホップに負けずに力強いため、適切なバランスを見極める奥深さがあります。”
―― 京都醸造
京都の素材と出会うベルギービール──「はばかりさん」の誕生
When Belgian tradition meets Kyoto ingredients
BBW京都で特に注目してほしいのが、京都限定醸造の「はばかりさん」だ。ベルギーのホワイトビールを出発点に、小麦を主原料とした豊かなボディと、瓶内二次発酵による自然な炭酸ときめ細かな泡というクラシックな骨格を守りながら、伝統的なオレンジピールとコリアンダーの代わりに柚子の皮と山椒を使っている。どちらも京都の料理に長く親しまれてきた素材だ。
“ベルギーから受け取ったものを、京都の素材と食文化を通して、私たちなりに表現した一杯です。”
―― 京都醸造
もう一つの目玉は、ベルギーのクリスマスエールにインスピレーションを受けたクワッド「満面喜色」(BBW京都では日替わりビールとして登場:10/8・9・10限定)。しっかりとしたアルコール感と豊かな味わいを持つこのビールは、名前の通り「多ければ多いほど、より楽しい」一杯だが、飲むペースだけはゆっくりめが勧められている。
ペアリングでは、定番の「一期一会」を炭火で焼いた貝類と合わせた時の驚きが忘れられないというエピソードも。ベルギー風ムール貝や、肉料理、ハーブソーセージとも好相性だそうだ。「満面喜色」はチーズとの組み合わせが特におすすめとのこと。
BBW京都でしか味わえない時間
A beer experience unique to BBW Kyoto
“今はワクワクのほうがずっと大きいです!私たちにとってベルギービールウィークエンド京都は、これまで出会う機会のなかった人たちと、ビールを通じて新しいつながりをつくれる絶好の機会だと思っています。”
―― 京都醸造
伝統的なベルギースタイルに忠実な一杯から、自分たちなりの発想を加えたモダンな一杯まで、幅広いラインナップが登場する。「思っていたベルギービールとはずいぶん違うな」と感じる人がいてもいい。それも含めて楽しんでほしい、と彼らは笑う。
普段、醸造所併設のタップルームで楽しむビールは「源流に近い場所」での体験。一方でビアフェスの魅力は、屋外の開放的な空気の中、音楽やにぎやかさとともに、普段なかなか出会えない土地のビールを飲み比べられることにある。今回の会場「お東さん広場」は、京都醸造が10周年記念イベントでもお世話になった場所だ。
“あの場所ならではの美しさと開放感の中で、たくさんのビールと人に出会えることを、今から楽しみにしています。”
―― 京都醸造
飲み比べてこそ分かる、酵母という個性
Taste the difference yeast makes
京都醸造にとって、すべての始まりにあったのはセゾンというビールタイプだ。
“もし機会があれば、ぜひ私たちの『一期一会』と、より伝統的なセゾンを飲み比べてみてください。同じセゾンというビールタイプでも、酵母や原料、つくり手の考え方によって、こんなにも表情が変わるのかと感じてもらえると思います。”
―― 京都醸造
そして今回のBBW京都、まさにその飲み比べができる。「一期一会」が使うのと同じアルデンヌ系酵母を持つのが、ベルギーを代表する醸造所のひとつ「La Chouffe(ラ・シュフ)」だ。同じ酵母株から、伝統と現代解釈がそれぞれどんな表情を引き出すのか──ぜひ飲み比べてみてほしい、と京都醸造自身も太鼓判を押す。また、ランビックやグーズの奥深さを知るなら「3 Fonteinen(ドリー・フォンテイヌ)」もBBW京都で味わえる。京都醸造が「ベルギービールの奥深さを知るうえで、ぜひ一度は体験してほしい」と挙げる醸造所の一つだ。
(編集部より:今回のBBW京都では、この2本に加えて「Saison 1858」も登場予定。セゾンというビールタイプの奥行きを、ぜひ比較して味わってみてほしい。)
京都醸造からの、来場者へのメッセージ
A message from Kyoto Brewing
“いつものお気に入りを飲んで、いつものように楽しむのももちろん最高です。でも、せっかくたくさんのビールが集まる機会なので、ぜひ少し冒険して、普段なら選ばないような一杯にも挑戦してみてください。私たちも、会場に並ぶさまざまなベルギービールを飲んで、新しいお気に入りを探してみたいと思っています!”
―― 京都醸造
BBW京都2026は、10月8日(木)〜12日(月・祝)、会場はお東さん広場(東本願寺前)。ベルギーのホワイトビールを京都らしい素材で造った「はばかりさん」、ストロングビール「満面喜色」、そして定番の「一期一会」──ベルギー酵母が京都でどう花開いたのか、ぜひ現地で確かめてほしい。
私たちBBW事務局にとっても、日本のブルワリーがこの舞台に立つのは初めての経験。ベルギービールの隣に並ぶ京都醸造の一杯を、ぜひ楽しみに待っていてください。
Instagram: 京都醸造のアカウント
Keiko
ベルギービールウィークエンド事務局 コンテンツマネージャーベルギービールに出会って15年、BBWに携わって13年目。ベルギーでの1ヶ月間の滞在経験を持ち、ベルギービール、食文化、音楽などベルギーのカルチャーをこよなく愛する。現地取材、醸造所巡り、イベント運営を通じて、その魅力を発信中。ベルギービールプロフェッショナル認定資格保有。
Instagram: @keiko.shio